ビジネスゲーム実習A レストランゲームの構造


■はじめに

 ビジネスゲームは、現実の世界に基づくモデルによって支配された仮想現実である。そこで、現実の世界から、ビジネスゲームに想定されるモデルについて理解しておくことが重要である。以下では、レストランゲームの構造について確認する。また、ビジネスゲームにおいて合理的に意思決定することを助ける損益分岐点について検討する。

■利益とは

 レストランゲームの目標は累積営業利益である。つまり、毎ラウンドの利益の積み重ねである。では、利益がどのように決まるかを理解しなければならない。以下の図は一般的な利益の構造である。

それぞれの意味は次の通り。
  1. 売上総利益(粗利)
    売上−原価
  2. 営業利益(営業に不可欠な人件費等を除いた利益)
    売上総利益−販管費
  3. 経常利益(営業に直接関係ないが普通に経営していて必要な支払・受取利息などを考慮した利益)
    営業利益−営業外損益
  4. 税引前当期純利益(通常ない損失を除いた利益)
    経常利益−特別損失
  5. 当期純利益(税金を除いた利益)
    税引前当期純利益−法人税等

■具体例で考える

 例えば、500円のカレーで考えると、以下のようになる。
  1. 売上総利益
    =代金500円−材料費200円=300円
  2. 営業利益
    =300円−人件費200円=100円
  3. 経常利益
    =100円−支払利息20円=80円
  4. 税引前当期純利益
    =80円−災害損失(皿割)30円
    =50円
  5. 当期純利益
    =50円−税金30円=20円

■レストランゲームでは単純化

 レストランゲームは、現実とは異なり、利益の構造は単純化されている。利益は、売上から費用を差し引いたものだが、ゲーム内では、売り上げは「販売単価×来店客数」、費用は「材料費×来店客数+広告費」で求められる。整理しておくと次の通り。
  1. 利益・・・・ 売上−費用
  2. 売上・・・・ 販売単価×来店客数
  3. 費用・・・・ 材料費×来店客数+広告費


■利益を上げるには?

 上記のように単純化された利益の構造を考えたとき、利益を上げるにはどうすればよいか?いくつかの方法が考えられる。
  • 利益を上げるには?
    売上を増やして、費用を減らす
  • 売上を増やすには?
    来店客数を増やすか、価格を上げる
  • 費用を減らすには?
    材料費を下げるか、広告費を下げる
  • 来店客数を増やすには?
    価格を下げるか、材料費を上げるか、広告費を増やす
 図解してみると次のようになる。


 図中の「+」は「来店客数が増えれば売上が増える」というように、一方が増えれば他方も増えるというポジティブな関係を表す。逆に「−」はネガティブな関係つまり「価格が上がれば来店客数が減る」といった、一方が増えれば他方が減る(あるいは一方が減れば他方が増える)という関係を表している。
 これらの内容を見ればわかるように、意思決定には矛盾が存在する。価格を下げれば来店客は増えるかもしれないが売上が下がり、費用を下げるために材料費を下げると味が落ちて来店客が減り売上が下がる、といった具合である。経営意思決定には、常にこのようなトレードオフがある。どうバランスをとるかが重要になる。

■損益分岐点

 このように単純化されているとはいえそれでもややこしいレストランゲームの経営意思決定において、少しでも合理的に意思決定するために考慮してほしいのが損益分岐点である。簿記や会計の授業を受けた人は勉強したはずである。損益分岐点とは、売上と費用が一致する点であり、売上がそれ以下なら赤字、それ以上なら黒字となる点である。図解するとつぎのようになる。


 簡単に解説すると、図中、横軸を販売数、縦軸を金額として、まず売上が右肩上がりの実線で表されている。左下の横軸と縦軸の交点から実線が引かれているが、これは販売数ゼロなら売上金額ゼロとなることを意味している。そして当然、10個売れば10個分の売上、100個売れば100個分の売上と増えていくことがわかる。
 一方の費用は、固定費と変動費の二重構造になっている。変動費は、材料費のようなもので、商品を売れば売るほど増える費用のことである。10個売れば10個分の材料費、100個なら100個分の材料費が必要になる。ただ、販売数ゼロすなわち全く売れなかったからと言って費用はゼロとはならない。家賃を払ったり水道光熱費の基本料金払ったり、商品が売れても売れなくてもかかる固定費がある。そのためグラフでは固定費(ゲームでは広告費も含む)の点線が横に引かれており、変動費の右肩上がりの点線は縦軸の固定費(ゲームでは広告費含む)の金額から引かれている。そして、固定費と変動費を足したものが総費用となる。
 販売数が少ないうちは固定費の割合が大きく、売上が総費用より少なくなるため赤字になるが、販売数が増えるにつれてその差は縮んでいき、損益分岐点で一致する。さらに販売数が増えると、売上が総費用より多くなり、利益が出始める。
 損益分岐点を計算するには公式がある。通常、次のように計算する。

   損益分岐点=固定費/(1−変動費/売上高)

 ただ、公式を忘れることもあるかもしれない。そんな時は損益分岐点が「売上=費用」であることを思い出し、次のような式を考えれば、公式に代わるものをを導き出せる。例えば、次のような式を考えるとよい。

   単価×販売数=原価×販売数+固定費
    (売上)   (変動費)


■レストランゲームの場合

 では損益分岐点をいかに使うか。レストランゲームの場合を想定して試してみたい。
 例えば、単価700円、原価300円、広告費10000円とした場合、管理費は50000円なので・・・

 売上は、700円×客数。
 費用は、300円×客数+10000+50000。

 客数をxと置いて次の方程式を解く。

 700x=300x+10000+50000
 400x=60000
 x=150

 つまり、客数150を超えれば黒字になる、と計算できる。

■戦略を立てる場合で考える

 レストランゲームで、単価700円、原価300円、広告費10000円、管理費は50000円という初期設定から、単価を500円にして販売した場合、客が220人くると予測を立てたとする。すると次のような方程式になる。

 500x=300x+10000+50000
 200x=60000
 x=300

 つまり、300人が損益分岐点なので、予想通り220人来店しても黒字にならないことがわかる。

 あるいは、他は初期設定どおりで、広告費だけ倍増し20000円にした場合、やはり客が220人来ると予測したとする。すると次のような方程式になる。

 700x=300x+20000+50000
 400x=70000
 x=175

 この場合、175人が損益分岐点なので、予想通り220人の来店があれば黒字になることがわかる。

 このように、損益分岐点を計算すると、より合理的に価格設定を行うことが可能となり、意思決定の精度が高まることになる。


   
 
 
 
 
 

 
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